インターネットモノカキマンの雑記

素人ラノベ作家が自作小説を掲載したり、アニメ・ゲーム・ラノベやそのコミカライズの紹介・レビューをしたり、日記を書いたりします。ジャンクフードみたいに楽しめます。多分。

神の庭の庭師になりました。 #30 ファーストファイト リベンジ

「ッ! 貴様ァ!」

 

 振るわれた刃を、左手の金属製の小手を使い、最小限の動きで受け流す。同時に右手で抜いたナイフで刺突。

 

 真っ先に刃を向けられた、スパイ達の副リーダー格のアイツが、それなりの地位らしき騎士に反旗を翻した瞬間。スパイ達は一斉に周囲の騎士や兵達に斬りかかった。

 

 首元を刺された騎士が、近くにいた、判断に迷った様子のスパイ達のリーダー格を即座に斬り捨て、首に手を当てながら何か叫んでいる。副リーダー格のアイツは逃げおおせたようだ。リーダー格には裏切りを伝えなかったのか……

 

 真っ先に刺された騎士は、とっさに魔法を使って防護を行ったか、態勢を変えて致命傷を回避したらしい。強化した特殊部隊の副リーダー格の不意打ちでそれなのか?素だと、エルル達よりも、下手したらかなり強そうなんだが……

 

 周囲では、基本騎士一人に対し、離反者三人がかりで相手をしていた。そして基本的に殺すか、負傷を与えるかすれば、簡易に目くらましを使い、すぐに離脱している。

 

 結構な数の騎士等の士官達に負傷を与えたようだが、離脱のための余力を残したのか、あまり仕留めきれてはいないようだ。離反者達の逃走経路上の兵は、それなりに犠牲になったようだが。

 

 離反者達は百五十名位はいたようだが、包囲を抜けたのは六十くらいだろうか。結構な数が仕留められている。大軍の只中だったからな。裏切らなかった仲間と相打ったりもしている。ちょっと心が痛いし、気の毒だが仕方ない。もう少し力を与えるべきだっただろうか……

 

 仕留められたのは、俺が傀儡化していない連中が多めだが。そして、包囲を抜けたら同士討ちも無い。一斉に弓矢や魔法で攻撃が行われる。離反者達は馬並みの速さで、何組かに分散しながらこちらに向かっている。

 

 事が起こった瞬間、デックと南の森の多種族達が走り出す。アールヴ達も少し遅れて走りながら、貯めておいた風の魔法を載せて遠距離から矢を放つ。アールヴの矢に載せられた魔法が弾幕のような突風を巻き起こし、敵の矢や魔法を反らしていく。ある程度はどうにかなったようだ。

 

 魔法や矢が投射された後、慌てて追ってきた、五百近い騎兵群とデックが衝突し、騎兵達が弾き飛ばされた。お、おい、嘘だろう?自分達の半数近い数の騎馬突撃を、武器や盾だけで弾き飛ばしたのか?そういえばヴァルドは大丈夫だとか言っていたが。

 

 いや、どうやら簡易的に魔法で堀も掘ったようだ。少しつまづいた所をドカンだな。少しはデックも吹っ飛ばされたようだが、殆どがピンピンしている。

 

 ヴァルドに言われた通り、身体強化や障壁、治癒力上昇等、ある程度かけているとはいえ、数が数だ。そんなに強くはかけられていない。連中に撒く呪いの分も温存しているからな。これで十分なのか。騎兵と相性が良かったのか、デックが丈夫過ぎるのか……

 

 回り込むように左右から遅れて迫ったり、デックを突破してきた比較的少数の騎兵は、多種族部隊が遊撃をしながら蹴散らしている。アールヴ達の二射目も、味方を避けて、恐ろしい精度で敵を射抜いている。

 

 一方的だ。騎兵以外の後発の連中が合流し、本格的な衝突になっても変わらない。少し眺めていると、アールヴ達が数十名、矢筒と弓を捨て、剣を持って、雄叫び上げながら突撃を始めた。いやいやいやいや。前衛的ファッションと相まって色々と凄まじい。

 

 比較的後衛職多めのアールヴが、デックと最前衛で暴れている。ヴァルドもそれを横目にしてからは、馬鹿デカい笑い声を上げながら暴れている。

 

 そういえばあの方達、確か身内が被害に遭った方々では。鬼気迫る戦いぶりだ。ミラさんの旦那さんもこうだったんだろうか。捨て身で無茶しなきゃ良いんだが……

 

 時折、後方にいる俺を、リーダーや幹部の類かと不審に思ったのか、精鋭らしき遊撃騎士が、兵を引き連れて突撃してもくる。メイドさん達や、俺以外のフォローも行うエルル達に囲まれ、瞬殺されていたが。素だと皆と同じくらいか、少し強そうな相手もいるんだけどな……

 

 シルヴィアは解体用らしきナイフのようなものを振り回しているし、ミネルバはロングメイスでボコスカ殴り、カタリナは斧の二刀流で敵を叩き割っていた。スノーは身体から生やした刃を振り乱しながらダンスを踊っている。楽しそうだ。シンディはジャマダハルでザシュザシュと斬りつけている。

 

 鎧の隙間を狙ったり、鎧ごと叩いたり、割ったりして、ブシャー、ズシャー、ドゴォという、まあなんとも言えない様子に、精神防護がかかっていなければ辛そうだとも感じる。まともに戦争の只中にいるのに緊張感が無いのはそれでだろうか。

 

 ちなみにエルルは複雑な軌道を描く矢を弾幕のように放っているし、ミーシャはアクロバティックに空中を足場にしながら、跳び回り斬りつけている。

 

 そしてアリシアは宙に熱湯を生み出し、浴びせかけている。えげつない。直接魔法で攻撃するよりも、鎧に対魔法防御が付与されている可能性の高い騎士には、意外に有効だとか。上空から落とす分には、魔力が消えればただの熱湯だからな。

 

 後、ルーカスは対魔法防御以外に、耐寒魔法の付与は得意だが、逆の熱さには意外と穴がある、とか言っていた。こないだのミスタ伯爵領での潜入時に気づいたとか。熱湯を浴びた騎士達が、陸に上がった魚の様にのたうち回っている。早く楽にしてやってくれ……

 

 俺は地味に、味方全体の支援と、周囲の皆を、魔法や矢から守るだけのお仕事だ。辺りを見ると、後方で離脱してきたスパイの連中が、衛生兵の方々に介抱されていた。他の負傷者も同じだな。襲撃されないよう、ちょっと念入りに見ておこう。

 

 衛生兵はアールヴや南の森の多種族の女性が多めである。薬師や医師や看護師枠、後は治癒魔法が得意な方々だ。ルーカス出身の、特に洗脳をしていない少数派の連中も、恐る恐るとだが、介抱を受けていた。周りを負傷が浅い、洗脳済みの連中が見張っている。

 

 個々人に好みはあるようだが、なんとなくデレデレしているようにも見えるな。なんだろう、地元に人間しかいないから、格別興味を惹かれるんだろうか。まあ微笑ましくもある。ちなみに副リーダー格のアイツは、ケモ度高めが好きらしい。いや、普通に動物好きなのかな?

 

 そんな感じで、緊張感が無いまま、戦闘はしばらく続いた。